第3講座「四日市公害の歴史2」の予告

2008/08/27

 次回の講座を担当する伊藤三男さんから、講座で使用する原稿が届きました。ホタルが四日市公害を語るという異色な歴史講座です。

四日市公害・環境市民学校2008  第3講座「四日市公害の歴史2」原稿


 9月27日(土)予定
巷談  ホタルの宿から
   作  市珉亭十九 

  皆さんこんにちは。お初にお目にかかります。このわたくし、実は鈴鹿川の水で育った「ホタル」なんでございます。鈴鹿川というのはほんとにありがたい川でしてな。鈴鹿山系に吸い込まれた雨水雪水がたっぷり地下にしみこんで、伏流水になってるんです。お陰で水道水が地下からの汲み上げ水でまかなわれたり、下流の楠では昔から酒づくりが盛んなのは皆さんご承知のことと思います。
 私たちがずーっと昔から住み着いてます楠町の一角も、その鈴鹿川の湧き水に恵まれたありがた~い揺りかごみたいなところです。この「楠町」、実はこちらの町長さんと隣の市長さんが仲良うなって「市町村合併」がありまして、四日市市の一部ということになってしまいましたが、やっぱり「楠」は楠なんでございます。
 地元の皆さんはわたしらを可愛がってくれてまして、何十年も前から「ほ ほ ホタル来い、あっちの水は苦いぞ・・・・」と、ええ、あっちというのは北の方角なんですがね。夜通しやたら明るくて煙りモクモクの工場街。コンビナートいうんやそうですが、なにやら恐ろしうてとても飛んでいこうとは思いません。こっちの人たちは田んぼを大事にして、田植えに草取り、刈り入れ収穫と季節感が満ちあふれていて、きれいな水も途切れることなく、ホントにわたしらの暮らしにはぴったりの「いなか」でして、ひっそりですがなかよう、ホタル祭なんかもやってもらって過ごしてきたのでございます。
 ところが、昨年でしたな、市長さんがわたくしらににじり寄っていらっしゃいましてな、「わが町にはホタルが生息しております。空のきれいなヨッカイチ」と、あちこちに宣伝していただくようになりました。市役所の職員の名刺に載せていただいたり、なんと立派なポスターまで作っていただきました。静かに田んぼで暮らしていた田舎もんが、いきなりまちん中に放り出されたようなことで、気恥ずかしいやら照れくさいやら・・・・。そっとしておいてほしいのになあ、とまあこれが実感なんですけど・・・・。
 いやいや、こんな失礼なこというとったらあかんのですな。これを機会に「ホタルは大事せなあかん、もっとホタルが暮らせる場所を増やそう」なんていう人間様が増えてくださりゃ、ありがたいことですし。でも、この市長さん、12月でおやめになるそうで、わたしらホタルはどんな扱いを受けるのか、いささか心配なんですがね。
 まあ前置きはこれくらいにしておきます。今日の本題は「よっかいち」のことなんです。わたしたちホタル一族は何年も前からここに住み継いできておるんですが、あっちのほうに見えるあの町がいつの間にやら空が曇ったり、海や川が濁ったりと評判の悪い町になってしまいました。まあ今は昔ほどではなくなったんですが、それでも自分とこのゴミを平気で捨てたりする工場が跡を絶ちません。何でこんな事になったんやら、わたしらが見てきたようすをちいっとばかり皆さんにお伝えしようかと思います。